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2014年のお別れ「空飛ぶサメの話」

2014年も終わりに近づいてきた。2014年、お別れしたものについて書こうと思う。

実は想像以上にたくさんあったことに気づく。会社員の自分とか新潟での生活とか。

いろいろある中で、今回は「空飛ぶサメ」の話をしたいと思う。

※今回も雑記なので自由に書いています。

http://www.flickr.com/photos/32184789@N00/134610871

photo by StormyDog

 

新潟でスポーツジムに通っていた頃、運動を終えた僕はサウナの中でテレビを見ていた。夕方のローカル番組なのだろう、小学3年生くらいの男の子が、自分の描いた絵を手にカメラに向かって立っていた。新緑の森と色とりどりの生き物たちが、画用紙いっぱいに描かれていた。その絵を印象的なものにしているのは、中央に描かれた大きなサメと、それにまたがる少年だった。少年は緊張した面持ちで、その絵の説明をはじめた。僕は「まだ小学生なのにしっかり説明していて偉いなぁ」と思いながら、顔の汗を拭いていた。次の瞬間、少年がこう言った。「真ん中に描いたのはサメです。このサメは空を飛びます。僕はその背中に乗っています。」

 

僕はそれを聞いたとき、殴られたような気分になった。汗を拭く手が止まった。少年は真っ直ぐな瞳で、何のためらいもなく「このサメは空を飛びます」と言った。サメは空を飛ばない。そのことを僕はいつからか知っている。当たり前だと思っている。このブログにサメの絵を書いて「サメが空を飛ぶ件について」なんて記事を書いたら「自己啓発のしすぎで頭がおかしくなったのだろう」と思われると確信している。だから、僕はそんな記事は書かないし、書くことができない。でもテレビの少年は違った。カメラに向かって堂々と、空飛ぶサメについて語っていた。僕にもかつて空飛ぶサメを描くことができた頃があったのだと思う。ずっと昔に。でももう思い出すことはできない。だから僕はお別れをすることにした。「さようなら、その頃の僕。」それは2014年に起こったことの中で、2番目に悲しい出来事だった。

 

少年は最後にこう言った。「僕はサメにまたがって森を飛び回ります。みんなが仲良く暮らしているのが見えます。」少年の目には、まだ世界はシンプルに見えているのだろうと思う。僕は歳をとって、世界や物事が複雑であることにすっかり慣れてしまっていた。だから、なぜこの世界ではみんなが仲良く暮らせないのかも、どうしたらみんなが仲良く暮らせるのかも、僕には分からないし考えることができない。僕に分かることといえば「サメは空を飛ばない」その程度のことだけなのだ。その事実に気づいたことは、2014年の中で最も悲しい出来事のように思えてしまった。了

 

今週のお題「2014年のお別れ」〈2014年をふりかえる 3〉